『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 11

全く、いちいち面白い人のいる学校だ。和光とは、一体どんな学校なのか?



「他だったら特殊学級にいるような子が普通クラスにいたし。私立だから変わってて*1。僕、小学校の時からダウン症*2って言葉、知ってたもん。学校の裏に養護学校みたいなのがあるんですよ。町田の方の田舎だから、まだ畑とか残ってて。それで、高校の時とか、休み時間にみんなで外にタバコ吸いに行ったりするじゃないですか。で、大体みんな行く裏山*3があって。タバコ吸ってたり、ボーッとしてたりなんかするとさ、マラソンしてるんですよ、その養護学校の人が。で、ジャージ着てさ、男は紺のジャージで、女はエンジのジャージで、なんか走ってるんですよ。で、ダウン症なんですよ。『あ、ダウン症の人が走ってんなあ』なんて言ってタバコ吸ってて。するともう一人さ、ダウン症の人が来るんだけど、ダウン症の人ってみんな同じ顔*4じゃないですか?『あれ? さっきあの人通ったっけ?』なんて言ってさ(笑)。ちょっとデカかったりするんですよ、さっきの奴より。次、今度はエンジの服着たダウン症の人がトットットとか走って行って、『あれ?これ女?』とか言ったりして(笑)。最後一〇人とか、みんな同じ顔の奴が、デッカイのやらちっちゃいのやらがダァ~って走って来て。『すっげー』なんて言っちゃって(笑)」



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*1:体育祭のリレーでは、先頭ランナーは全員肢体不自由者がやることになっているという。スタートと同時に、全走者が違う方向へ走り始める。和光は養護学校との交流も盛んで、小山田氏は何故か音楽室でその接待役になり、車イスを押してたことがある。

*2:主に二一番目の染色体に一本過剰な染色体が存在することで発生する。全身の筋肉の緊張が低下し、精神発達の遅滞もみられる。『家庭医学大事典』小学館より。

*3:この裏山では、死体も発見されている。発見者は小沢健二氏の兄。同じく和光出身である。現在、裏山は「和光鶴川幼稚園」の校舎になっている。当時タバコを吸う生徒は「裏山派」「更衣室派」「非常階段派」の三派に別れていた。

*4:目と目の間隔が開いている特有な顔貌。低い鼻すじ、太い首など、本当に皆そっくりな顔をしている。『家庭医学大事典』小学館刊より。ダウン症の子供には、音楽を楽しむ子が多い。『家庭医学大百科』主婦の友社刊より。

『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 10

「小山田の家に行く」

―――他にいじめてた人はいるんですか?



「いじめっていうのとは全然違って、むしろ一緒に遊んでた奴なんだけど、朴(仮名)ってのがいて。こいつは名前の通り朝鮮人なんだけど、朝鮮学校から転校して来たのね。で、なんでからかわれたんだっけ……、とにかく、本当にピュアでいい奴なのね。だからんだろうけど。あ、思い出した! これ実は根深いんだけど。初日の授業で、発表の時にはりきって『はい』って手挙げたんだけど、挙げ方がこんな(ウルトラマンスペシウム光線に似たポーズ)だったのね。それで教室中大爆笑になって、それでからかわれ始めた。でもそれは朝鮮学校の手の挙げ方だったのね」



「あと、こいつの家は親が厳しくて、門限が五時とか。で、無理やりひきとめてサ店とか入って、食うだけ食って五時過ぎたら『じゃあ!』とか言って(笑)」



「ここの親は、怒るとすぐ子供を坊主にしちゃうのね。で、朴がラジカセを買うって一万円ためてたんだけど、ある時、ベランダに閉じ込められて、窓とか鍵閉められちゃったの。そしたら窓ガラス蹴り破って出て来て。先生に叱られて結局ラジカセの一万円でガラス代弁償することになったの(笑)。次の日、やっぱりこいつ坊主になってました(笑)」



「で、ある日『おまえ、そんな家出ちゃえよ。ウチ泊めてやるからさ』とか半分冗談でアドバイスしたら、ホントに朝の六時に駅から電話かかってきた。仕様が無いから迎えに行って家に置いてあげたんだけど、こいつのバッグが着替えじゃなくて教科書で一杯でさ。夏休みなのに(笑)。しかも弟に『小山田の家に行く』って思いっきり告げてきちゃったらしくて、結局すぐ親が迎えに来て。僕は怒られた(笑)」



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『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 9

しかしどんなタイプの奴でも行かなきゃいけないのが修学旅行だ。この学校行事最大のイベントで、何も起こらない訳がない。


奇妙な立場

「中三の時、一コ上の先輩でダブっちゃった人が下りてきたんですよ、ウチのクラスに。で、その人が渋カジの元祖みたいな人で。バカな先輩なんだけど。でも僕はわりと仲が良かったのね。で、同じ班になっちゃって、そのまま修学旅行に行くことになっちゃったんですよ。そのメンツっていうのが、村田と僕とその渋カジ(笑)。三人同じ班で。かなりすごいキャラクター(笑)。好きなもんどうしが集まったとかじゃ全然なくて(笑)、たまたまそういう班だったんですけど。そいで修学旅行とか行ったら同じ班じゃないですか。密室だしさ……他の班の奴とかも色々来てたりしてさ。で、ウチの班で布団バ~ッとひいちゃったりするじゃない。するとさ、プロレス技やったりするじゃないですか。例えばバックドロップとかって普通できないじゃないですか?だけどそいつ軽いからさ、楽勝でできんですよ。ブレンバスターとかさ(笑)。それがなんか盛り上がっちゃってて。みんなでそいつにプロレス技なんかかけちゃってて。おもしろいように決まるから『もう一回やらして』とか言って。それは別にいじめてる感じじゃなかったんだけど。ま、いじめてるんだけど(笑)。いちおう、そいつにお願いする形にして、『バックドロップやらして』なんて言って(笑)、"ガ~ン!"とかやってたんだけど。で、そこになんか先輩が現れちゃって。その人はなんか勘違いしちゃってるみたいでさ、限度知らないタイプって言うかさ。なんか洗濯紐でグルグル縛りに入っちゃってさ。素っ裸にしてさ。そいでなんか『オナニーしろ』とか言っちゃって。『オマエ、誰が好きなんだ』とかさ(笑)。そいつとか正座でさ。なんかその先輩が先頭に立っちゃって。なんかそこまで行っちゃうと僕とか引いちゃうっていうか。だけど、そこでもまだ行けちゃってるような奴なんかもいたりして。そうすると、僕なんか奇妙な立場になっちゃうというか。おもしろがれる線までっていうのは、おもしろがれるんだけど。『ここはヤバイよな』っていうラインとかっていうのが、人それぞれだと思うんだけど、その人の場合だとかなりハードコアまで行ってて。『オマエ、誰が好きなんだ』とか言って。『別に…』なんか言ってると、パーン! とかひっぱたいたりとかして。『おお、怖え~』とか思ったりして(笑)。『松岡さん(仮名)が好きです』とか言って(笑)。『じゃ、オナニーしろ』とか言って。『松岡さ~ん』とか言っちゃって。かなりキツかったんだけど、それは」



以上が2人のいじめられっ子の話だ。この話をしてる部屋にいる人は、僕もカメラマンの森さんも赤田さんも北尾さんもみんな笑っている。残酷だけど、やっぱり笑っちゃう。まだまだ興味は尽きない。



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『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 8

いじめ談義は、どんな青春映画よりも僕にとってリアルだった。恋愛とクラブ活動だけが学校じゃない。僕の学校でも危うく死を免れている奴は結構いたはずだし、今でも全国にいるだろう。小山田さんには、いじめられっ子の二人目、村田さん(仮名)の話もしてもらった。


毒ガス攻撃

「村田は、小学生の頃からいたんですよ。こいつはちょっとおかしいってのも分かってたし。だけど違うクラスだったから接触する機会がなかったんだけど、中学に入ると、同じクラスになったから。で、様々なな奇行をするわけですよ。村田っていうのは、わりと境界線上にいる男で、やっぱ頭が病気でおかしいんだか、ただバカなんだか、というのが凄い分りにくい奴で、体なんかもちっちゃくて、それでこいつは沢田とは逆に癇癪が内に向かうタイプで。いじめられたりすると、立ち向かってくるんじゃなくて、自分で頭とかを壁とかにガンガンぶつけて、『畜生、畜生!』とか言って(笑)、ホントにマンガみたいなの。それやられるとみんなビビッて、引いちゃうの。『あの人、やばいよ』って。」



「お風呂に入らないんですよ、こいつは(笑)。まず、臭いし、髪の毛がかゆいみたいで、コリコリコリコリ頭掻いてるんですよ。何か髪の毛を一本一本抜いていくの。それで、10円ハゲみたくなっちゃって、そこだけポコっとハゲててルックス的に凄くて。勉強とか全然できないし、運動とかもやっぱ、全然できないし」



「段ボールの中に閉じ込めることの進化形で、掃除ロッカーの中に入れて、ふたを下にして倒すと出られないんですよ。そいつなんかはすぐ泣くからさ、『アア~!』とか言ってガンガンガンガンとかいってやるの(笑)。そうするとうるさいからさ、みんなでロッカーをガンガン蹴飛ばすんですよ。それはでも、小学校の時の実験精神が生かされてて。密室ものとして。あと黒板消しはやっぱ必需品として。"毒ガスもの"として(笑)」



「村田は、別に誰にも相手にされてなかったんだけど、いきなりガムをたくさん持ってきて、何かみんなに配りだして。『何で、あいつ、あんなにガム持ってるんだ? 調べよう』ってことになって、呼び出してさ、『お前、何でそんなにガム持ってるの?』って聞いたら、『買ったんだ』とか言っててさ。三日間ぐらい、そういう凄い羽振りのいい時期があって。そんで付いて行って、いろんなもん買わせたりして。そんで、三日間くらいしたら、ここに青タン作って学校に来て。『おまえ、どうしたの?』とかきいたら、『親にブン殴られた』とか言ってて(笑)。親の財布から一五万円盗んだんだって。でも何に使っていいか分かんないから、ガム買ったりとかそういうことやって(笑)。だから、そいつにしてみればその三日間っていうのはね、人気があった時代なんですよ。一五万円で人が集まって来て。かなりバカにされて、『買えよ』って言われてるだけなのに。全然、沢田なんかよりも普通に話せるしね。普通に話とかも全然できるしね。体がおかしいとか、障害があるような、そういうタイプでもないっぽいんですよ」



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『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 7

沢田の"プライマル・スクリーム"

―――休み時間は、どこに?



「僕は、休み時間は、他のクラスの奴とか仲いい奴いたから、何かどっか外行ったり、そういう感じだったけど。沢田は、……っていうか、こういう障害がある人とかって言うのは、なぜか図書室にたまるんですよ。図書室っていうのが、もう一大テーマパークって感じで(笑)。しかもウチの学年だけじゃなくて、全学年のそういう奴のなぜか、拠り所になってて、きっと逃げ場所*1なんだけど、そん中での社会っていうのがまたあって。さっき言った長谷川君っていう、超ハードコアなおかしい人が、一コ上で一番凄いから、イニシアチブを取ってね、みんなそいつのことをちょっと恐れてる。そいつには相棒がいて。耳が聞こえないやつで、すっごい背がちっちゃいのね。何か南米人とハーフみたいな顔をしてて、色が真っ黒で、そいつら二人でコンビなのね。で、そいつら先輩だから、ウチの学年のそういう奴にも威張ってたりとかするの。何かたまに、そういうのを『みんなで見に行こう』『休み時間は何やってるのか?』とか言ってさ。そういうのを好きなのは、僕とか含めて三、四人ぐらいだったけど、見に行ったりすると、そいつらの間で相撲が流行っててさ(笑)。図書館の前に、土俵みたいなのがあって、相撲してるのね。その長谷川君っていうのが、相撲が上手いんですよ。凄い、足掛けてバーンとか投げる技をやったりとかすんの。素人じゃないの。小人プロレス*2なんて比じゃない! って感じなんですよ、もう(笑)。で、やっぱりああいう人たちって……ああいう人たちっていう言い方もあんまりだけど……何が一番凄いかって、スクリーミングするんですよ。叫び声がすごくナチュラルに出てくる。『ギャーッ』とか『ワーッ』とかいう声って、普通の人ってあんまり出さないじゃないですか、それが、もう本当に奇声なんか出てきて、すごいんです」



「その中で沢田って、その人たちからしてみれば、後輩なんだけど、体とかデカい、でも、おとなしいタイプなのね。フランケン・タイプっていうか。だけど怒らすと怖いって感じで。で、その軍団でたまに食堂で食うんですよ。リーダーの長谷川君がラーメンとか頼むと、箸ちゃんと持てないから、半分は口に入るんだけど、半分はお盆に落ちるのね。そうすると、また、こうやって(お盆に口をつける)食ったりしてるの。その中で一回、ケンカになっちゃったの、食堂で。沢田に対して長谷川が何かをやったかなんかで、沢田があんまり切れないんだけど、久々に切れて、お茶があるじゃない、それをかけちゃったんですよ」



―――学校って図書室とか用務員室とか、

もの凄いはっきりとした"場所"がありますよね。

理科室とか、体育倉庫とか。何かが起こりやすい*3



「太鼓クラブとかは、もうそうだったのね。体育倉庫みたいなところでやってたの、クラブ自体が。だから、いろんなものが置いてあるんですよ、使えるものが。だから、マットレス巻きにして殺しちゃった事件*4とかあったじゃないですか、そんなことやってたし、跳び箱の中に入れたりとか。小道具には事欠かなくて、マットの上からジャンピング・ニーバットやったりとかさー。あれはヤバイよね、きっとね(笑)」



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*1:大槻ケンヂは、バンドブームの頃、慣れないバンドと"対バン"する時は楽屋にいることができず、トイレに隠れていたという。

*2:女子プロレスの前座等で見ることができる。別称『ミゼット・プロレス』。代表レスラーに「リトル・フランキー」「角掛留造」「ミスター・ブッタマン」

*3:学校が怪談の宝庫であることは、今さら言うまでもないだろう。

*4:一九九三年一月、山形県新庄市の中学で起きた。殺した少年達が有罪か無罪かは、二転三転した。

『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 6

石川さゆり VS ジザメリ

「学校で透明な下敷きに好きなの入れるのって流行るじゃないですか。僕とかも入れてたんだけど、それ見て真似したのか何なのか、ある日透明な下敷きを沢田が買ってきたんですよ。それで、『あの下敷きに何が入るのか?』って僕はかなり注目してたの。で、シャレでも何でもなくて、ホントに石川さゆりの写真が入ってたんですよ。それで『何、お前、石川さゆり好きなの?』って聞いたら『ウン』って言ってるの。ちょっとお母さんの『週刊女性』とかそういうのから切り取ったような。石川さゆりが出てる本なんて持ってないよね、高校生で(笑)。かなりタイプだったみたいで」



―――ちなみに、同時期に小山田さんは下敷きに何を入れてたんですか?



「何だ……ジーザス&メリーチェーンとか」



―――(笑)。



「こいつ、高校ぐらいになると、ちょっと性に目覚めちゃうんですよ、それがまた凄くてね、朝の電車とかで、他の学校の女子高生とかと一緒になったりするじゃん、そうすると、もう反応が直だからさ、いきなり足に抱きついちゃったりとかさ。あと、沢田じゃないんだけど、一個上の先輩で……そいつはもう超狂ってた奴だったんだけど……長谷川君(仮名)という人がいて、そいつとかもう、電車の中でオナニーとか平気でするのね、ズボンとか脱いで、もうビンビンに立ってて(笑)。いつも指を三本くわえてて、目がここ(右の黒目)とここ(左の黒目)が凄く離れてて、かなりキてる人で、中学だけで高校は行けなかったんだけど。沢田は、そこまではいかなかったけど、反応は直だから」



「沢田はね、あと、何だろう……"沢田、ちょっといい話"は結構あるんですけど……超鼻詰まってんですよ。小学校の時は垂れ放題で、中学の時も垂れ放題で、高校の時からポケットティッシュを持ち歩くようになって。進化して、鼻ふいたりするようになって(笑)、『おっ、こいつ、何かちょっとエチケットも気にし出したな』って僕はちょっと喜んでたんだけど、ポケットティッシュってすぐなくなっちゃうから、五・六時間目とかになると垂れ放題だけどね。で、それを何か僕は、隣の席でいつも気になってて。で、購買部で箱のティッシュが売っていて、僕は箱のティッシュを沢田にプレゼントしたという(笑)。ちょっといい話でしょ?しかも、ちゃんとビニールひもを箱に付けて、首に掛けられるようにして、『首に掛けとけ』って言って、箱に沢田って書いておきましたよ(笑)。それ以来沢田はティッシュを首に掛けて、いつも鼻かむようになったという。それで五・六時間目まで持つようになった。かなり強力になったんだけど、そしたら沢田、僕がプレゼントした後、自分で箱のティッシュを買うようになって」



「でも別に、仲いいって言ってもさ、休みの日とか一緒に遊んだりとか、そういうことは絶対なかったし、休み時間とかも、一緒に遊んだりっていうのは、絶対なかったんだけど」



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『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 5

沢田からの年賀状

「肉体的にいじめてたっていうのは、小学生ぐらいで、もう中高ぐらいになると、いじめはしないんだけど……どっちかって言うと仲良かったっていう感じで、いじめっていうよりも、僕は沢田のファンになっちゃってたから。でも、だからもう、とにかく凄いんです、こいつのやることは。すっごい、バカなんだけど……勉強とかやっぱ全然できないんです、数学とかは。でも国語のテストとかになると、漢字だけはめちゃくちゃ知ってて、スッゲェ難しい字とかを、絶対読めないような漢字とか使って文章とか書くのね(笑)。文章とか、もう支離滅裂なんだけど、漢字だけは、もう難しい漢字で、しかも字が、原稿用紙に四マスに一文字の大きさで書いたかと思うと、次に、一マスに半分ぐらいの字で書いてたりとかして、もうグッチャグチャなの。それで、年賀状とか来たんですよ、毎年。あんまりこいつ、人に年賀状とか出さないんだけど、僕の所には何か出すんですよ(笑)。で、僕は出してなかったんだけど、でも来ると、ハガキに何かお母さんが、こう、線を定規で引いて、そこに『明けましておめでとう』とか『今年もよろしく』とか鉛筆で書いてあって、スゲェ汚い字で(笑)」



「あと、こいつの凄いのは、学校の名簿*1を休み時間の間とか、ずーっと見とくのね。それで全部覚えてるのね、名前とクラスと、お父さんお母さんの名前とかも、住所と電話番号と、他のクラスに兄弟がいるかとか、そういうのも全部知ってて、学校に行く途中とかに、沢田に会うと、全然知らない下級生について『沢田ぁ、あいつの名前何て言うの?』って聞いたら、『なんとかかんとか』って言って、『住所は?』って聞くと、『なんとかかんとか』って言って、全部知ってんですよ(笑)」



「で、朝、こいつすっごい早く学校来るのね、誰もいない時間とかに。遅刻とか絶対しなくって。たまに僕、朝早く電車に乗ると、こいつもう、電車の中で超有名人で、他の学校とかにも。朝、いつも小田急線の中で、『コケコッコー』とか言う声が聞こえるんですよ。そうすると『あ、沢田がいる』(笑)ってみんな分かって。朝、絶対、小田急線の中でニワトリの鳴き声がすると、『あ、沢田が電車に乗ってるなぁ』という」



「中学時代はねぇ、僕、ちょっとクラス離れちゃってて、あんまり……高校でまた、一緒になっちゃって、高校は、出席番号が隣だったから、ずっと席が隣だったのね、それでまたクラスに僕、全然友達いなくてさ(笑)」



―――お互いアウトサイダーなんだ(笑)。



「そう、あらゆる意味で(笑)。二、三人ぐらいしか仲いい奴とかいなくて、席隣りだからさ、結構また、仲良くなっちゃって……仲良くって言ったらアレなんだけど(笑)、俺、ファンだからさ、色々聞いたりするようになったんだけど。でも、高校になったらねぇ、暴れ出すとか、そういう回数は減ったんだけど。ま、相変わらず、ウンコ漏らしたりするのは週一ぐらいでやってて、とにかく最初の頃は、デビュー当時っていうか(笑)、ウンコ漏らすって言ったら、それはもう学校中のイベントになっちゃって、たいがい、ウンコ漏らしたトイレに行ってさ、先生が全部、パンツとズボンを脱がして、ホースで水かけてさ、ジャーッとかやってるんですよ(笑)。それで午後はジャージになってて」



「ジャージになると、みんな脱がしてさ、でも、チンポ出すことなんて、別にこいつにとって何でもないことだからさ、チンポ出したままウロウロしているんだけど。だけどこいつチンポがデッカくてさ*2、小学校のときからそうなんだけど、高校ぐらいになるともう、さらにデカさが増しててさ(笑)。女の子とか反応するじゃないですか。だからみんなわざと脱がしてさ、廊下とか歩かせたりして。でも、もう僕、個人的には沢田のファンだから、『ちょっとそういうのはないなー』って思ってたのね。……って言うか、笑ってたんだけど、ちょっと引いてる部分もあったって言うか、そういうのやるのは、たいがい珍しい奴って言うか、外から来た奴とかだから」



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*1:名簿暗記少年は、昔、愛媛の進学校として名高い愛光中にもいたことが確認されている。

*2:性器の大きないじめられっ子、というストーリーは、筆者(村上)の通学した大阪の高校にも見受けられた。