『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 13
いじめられっ子に会いに行く
事実を確かめなきゃ。
小山田さんにいじめられっ子の名前を教えてもらった僕は、まず手紙を書いた後、彼らとコンタクトをとっていった。何かロードムービーの中に入り込んだような感覚になる。
●4月6日
村田さんの家に電話する。お母さんが出た。聞けば、村田さんは、現在はパチンコ屋の住込み店員をやっているという。高校は和光を離れて定時制に。お母さん「中学時代は正直いって自殺も考えましたよ。でも、親子で話し合って解決していって。ウチの子にもいじめられる個性みたいなものはありましたから。小山田君も元気でやってるみたいだし」
住込みの村田さんは家族とも連絡がとれないらしい。パチンコ屋の電話番号は、何度尋ねても教えて貰えず、最後は途中で電話を切られた。
●4月28日
沢田さんに電話してもお母さんが出た。電話だけだとラチが開かないので、アポなしでの最寄り駅から電話。「今近くまで来てるんですが……」田園調布でも有数の邸宅で、沢田さんと直接会うことができた。お母さんによれば"学習障害"だという。家族とも「うん」「そう」程度の会話しかしない。現在は、週に二回近くの保健所で書道や陶器の教室に通う。社会復帰はしていない。
お母さん「卒業してから、ひどくなったんですよ。家の中で知ってる人にばかり囲まれてるから。小山田君とは、仲良くやってたと思ってましたけど」寡黙ながらどっしりと椅子に座る沢田さんは、眼鏡の向こうから、こっちの目を見て離さない。ちょっとホーキング入ってる。
―――対談してもらえませんか?
「(沈黙……お母さんの方を見る)」
―――……小山田さんとは、仲良かったですか?
「ウン」
数日後、お母さんから「対談はお断りする」という電話が来た。
●5月1日
朴さんは、電話してもマンションに行っても違う人が出た。手紙も『宛て所に尋ねあたりません』で戻って来た。