『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 5

沢田からの年賀状

「肉体的にいじめてたっていうのは、小学生ぐらいで、もう中高ぐらいになると、いじめはしないんだけど……どっちかって言うと仲良かったっていう感じで、いじめっていうよりも、僕は沢田のファンになっちゃってたから。でも、だからもう、とにかく凄いんです、こいつのやることは。すっごい、バカなんだけど……勉強とかやっぱ全然できないんです、数学とかは。でも国語のテストとかになると、漢字だけはめちゃくちゃ知ってて、スッゲェ難しい字とかを、絶対読めないような漢字とか使って文章とか書くのね(笑)。文章とか、もう支離滅裂なんだけど、漢字だけは、もう難しい漢字で、しかも字が、原稿用紙に四マスに一文字の大きさで書いたかと思うと、次に、一マスに半分ぐらいの字で書いてたりとかして、もうグッチャグチャなの。それで、年賀状とか来たんですよ、毎年。あんまりこいつ、人に年賀状とか出さないんだけど、僕の所には何か出すんですよ(笑)。で、僕は出してなかったんだけど、でも来ると、ハガキに何かお母さんが、こう、線を定規で引いて、そこに『明けましておめでとう』とか『今年もよろしく』とか鉛筆で書いてあって、スゲェ汚い字で(笑)」



「あと、こいつの凄いのは、学校の名簿*1を休み時間の間とか、ずーっと見とくのね。それで全部覚えてるのね、名前とクラスと、お父さんお母さんの名前とかも、住所と電話番号と、他のクラスに兄弟がいるかとか、そういうのも全部知ってて、学校に行く途中とかに、沢田に会うと、全然知らない下級生について『沢田ぁ、あいつの名前何て言うの?』って聞いたら、『なんとかかんとか』って言って、『住所は?』って聞くと、『なんとかかんとか』って言って、全部知ってんですよ(笑)」



「で、朝、こいつすっごい早く学校来るのね、誰もいない時間とかに。遅刻とか絶対しなくって。たまに僕、朝早く電車に乗ると、こいつもう、電車の中で超有名人で、他の学校とかにも。朝、いつも小田急線の中で、『コケコッコー』とか言う声が聞こえるんですよ。そうすると『あ、沢田がいる』(笑)ってみんな分かって。朝、絶対、小田急線の中でニワトリの鳴き声がすると、『あ、沢田が電車に乗ってるなぁ』という」



「中学時代はねぇ、僕、ちょっとクラス離れちゃってて、あんまり……高校でまた、一緒になっちゃって、高校は、出席番号が隣だったから、ずっと席が隣だったのね、それでまたクラスに僕、全然友達いなくてさ(笑)」



―――お互いアウトサイダーなんだ(笑)。



「そう、あらゆる意味で(笑)。二、三人ぐらいしか仲いい奴とかいなくて、席隣りだからさ、結構また、仲良くなっちゃって……仲良くって言ったらアレなんだけど(笑)、俺、ファンだからさ、色々聞いたりするようになったんだけど。でも、高校になったらねぇ、暴れ出すとか、そういう回数は減ったんだけど。ま、相変わらず、ウンコ漏らしたりするのは週一ぐらいでやってて、とにかく最初の頃は、デビュー当時っていうか(笑)、ウンコ漏らすって言ったら、それはもう学校中のイベントになっちゃって、たいがい、ウンコ漏らしたトイレに行ってさ、先生が全部、パンツとズボンを脱がして、ホースで水かけてさ、ジャーッとかやってるんですよ(笑)。それで午後はジャージになってて」



「ジャージになると、みんな脱がしてさ、でも、チンポ出すことなんて、別にこいつにとって何でもないことだからさ、チンポ出したままウロウロしているんだけど。だけどこいつチンポがデッカくてさ*2、小学校のときからそうなんだけど、高校ぐらいになるともう、さらにデカさが増しててさ(笑)。女の子とか反応するじゃないですか。だからみんなわざと脱がしてさ、廊下とか歩かせたりして。でも、もう僕、個人的には沢田のファンだから、『ちょっとそういうのはないなー』って思ってたのね。……って言うか、笑ってたんだけど、ちょっと引いてる部分もあったって言うか、そういうのやるのは、たいがい珍しい奴って言うか、外から来た奴とかだから」



bibokj.hatenablog.com

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*1:名簿暗記少年は、昔、愛媛の進学校として名高い愛光中にもいたことが確認されている。

*2:性器の大きないじめられっ子、というストーリーは、筆者(村上)の通学した大阪の高校にも見受けられた。