『Quick Japan』95年3号 「いじめ紀行 第1回ゲスト 小山田圭吾の巻」 7

沢田の"プライマル・スクリーム"

―――休み時間は、どこに?



「僕は、休み時間は、他のクラスの奴とか仲いい奴いたから、何かどっか外行ったり、そういう感じだったけど。沢田は、……っていうか、こういう障害がある人とかって言うのは、なぜか図書室にたまるんですよ。図書室っていうのが、もう一大テーマパークって感じで(笑)。しかもウチの学年だけじゃなくて、全学年のそういう奴のなぜか、拠り所になってて、きっと逃げ場所*1なんだけど、そん中での社会っていうのがまたあって。さっき言った長谷川君っていう、超ハードコアなおかしい人が、一コ上で一番凄いから、イニシアチブを取ってね、みんなそいつのことをちょっと恐れてる。そいつには相棒がいて。耳が聞こえないやつで、すっごい背がちっちゃいのね。何か南米人とハーフみたいな顔をしてて、色が真っ黒で、そいつら二人でコンビなのね。で、そいつら先輩だから、ウチの学年のそういう奴にも威張ってたりとかするの。何かたまに、そういうのを『みんなで見に行こう』『休み時間は何やってるのか?』とか言ってさ。そういうのを好きなのは、僕とか含めて三、四人ぐらいだったけど、見に行ったりすると、そいつらの間で相撲が流行っててさ(笑)。図書館の前に、土俵みたいなのがあって、相撲してるのね。その長谷川君っていうのが、相撲が上手いんですよ。凄い、足掛けてバーンとか投げる技をやったりとかすんの。素人じゃないの。小人プロレス*2なんて比じゃない! って感じなんですよ、もう(笑)。で、やっぱりああいう人たちって……ああいう人たちっていう言い方もあんまりだけど……何が一番凄いかって、スクリーミングするんですよ。叫び声がすごくナチュラルに出てくる。『ギャーッ』とか『ワーッ』とかいう声って、普通の人ってあんまり出さないじゃないですか、それが、もう本当に奇声なんか出てきて、すごいんです」



「その中で沢田って、その人たちからしてみれば、後輩なんだけど、体とかデカい、でも、おとなしいタイプなのね。フランケン・タイプっていうか。だけど怒らすと怖いって感じで。で、その軍団でたまに食堂で食うんですよ。リーダーの長谷川君がラーメンとか頼むと、箸ちゃんと持てないから、半分は口に入るんだけど、半分はお盆に落ちるのね。そうすると、また、こうやって(お盆に口をつける)食ったりしてるの。その中で一回、ケンカになっちゃったの、食堂で。沢田に対して長谷川が何かをやったかなんかで、沢田があんまり切れないんだけど、久々に切れて、お茶があるじゃない、それをかけちゃったんですよ」



―――学校って図書室とか用務員室とか、

もの凄いはっきりとした"場所"がありますよね。

理科室とか、体育倉庫とか。何かが起こりやすい*3



「太鼓クラブとかは、もうそうだったのね。体育倉庫みたいなところでやってたの、クラブ自体が。だから、いろんなものが置いてあるんですよ、使えるものが。だから、マットレス巻きにして殺しちゃった事件*4とかあったじゃないですか、そんなことやってたし、跳び箱の中に入れたりとか。小道具には事欠かなくて、マットの上からジャンピング・ニーバットやったりとかさー。あれはヤバイよね、きっとね(笑)」



bibokj.hatenablog.com

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*1:大槻ケンヂは、バンドブームの頃、慣れないバンドと"対バン"する時は楽屋にいることができず、トイレに隠れていたという。

*2:女子プロレスの前座等で見ることができる。別称『ミゼット・プロレス』。代表レスラーに「リトル・フランキー」「角掛留造」「ミスター・ブッタマン」

*3:学校が怪談の宝庫であることは、今さら言うまでもないだろう。

*4:一九九三年一月、山形県新庄市の中学で起きた。殺した少年達が有罪か無罪かは、二転三転した。